ぴよぴよスイマーの日記

Kakitai koto wo Tsura-tsura to. 書くのは好き。読むのも好き。そんな日記

映画「蜜蜂と遠雷」鑑賞記

二年前に読了した「蜜蜂と遠雷」。

音が本から溢れ出てくるような感覚に襲われたのもあの日が初めて。

単行本にも遊び心のある仕掛けがされてて手元に置いておこうと思っていました。

 


先日、ある映画を観に行った時スクリーンに映し出される予告編の中に「蜜蜂と遠雷」がありました。

うそーん! あの小説が実写化されるのー? ホントに出来るのー?

なんて猜疑心を抱いてしまい、斜に構えて映画を観に行く事と相成りました。

というより怖いものみたさという感覚に近かったのかもしれません。

 


なんて言うんだろう。

不安と期待の入り混じった、という言葉はこういう時に使うんでしょうね。

原作が衝撃的で、まさか本から♪が飛び出す感覚に襲われるなんて思いもしなかったし、

物語の展開が素晴らしく良く、登場人物の多さに加え、濃密なストーリーを果たして

2時間、3時間という枠に収めることが出来るんだろうか。。。と素人ながら思ってました。

反面、どんな景色をこの目に写しだしてくれるんだろうという期待感もありました。

 

 

 

ここからはネタバレになると思いますので…

 


私が感じた小説の内容を書くと

・若きピアニストたちの群像劇

・風間塵の音楽に対する思いが彼らを突き動かす物語

・コンクールという舞台での競争はもはや眼中にない

・彼らが作り上げる音と音(魂と魂)のぶつかりあい(ぶつけ合い)

・一人一人に焦点を当てた心の動きにハマる

・ハッキリ言ってコンクール結果などどうでもイイ。でも知りたい(笑)

 


言葉にできないほどの良書に巡り合えたあの日。

感動覚めやらぬ休日の午後、静かに本を閉じたわけです。

もしかすると実在するかもしれないマサルや栄伝亜夜、風間塵、そして高島明石、コンテスタント達。

レビューを読むと明石ファンが多いようですが、私は風間塵のような空気感が好きです。

亜夜がストーリーに差し色を加え、マサルが安定感のある音を醸し出してくれるんです。

明石は年齢が上な事もあって落ち着いた雰囲気で周りを包んでくれるおゆな抱擁感があります。

風間塵はね、どこか風のようで吹いては消え、消えてはまた現れる、そんな感じの少年に思えました。

とは言え、その風は彼を取り巻くピアニスト達のモチベーションを空高く舞い上がらせるんですね。

疾走感。

何かに惹かれるように音を作り出す、絞り出す、意図せず生まれる共感が互いを昇華させる。

そんな物語に思えました。

 

 

 

映画はぽーっと観る側なので詳しいことはわからないのですが、

原作の核となる部分を凝縮して映画化したという感じがしました。

それがとても効果的だったというか(原作を読んでいたこともあって)、

新しい物語に仕上げて感動を与えてくれたように感じたわけです。

 


何度も書いてしまいますが、風間塵の視点で物語を読んでいたこともあって、

映画の中では栄伝亜夜が主体となってましたがこれがまたイイ。

 


夕景に浮かぶ満月。

あの満月はこの後につながる映像の引き立て役となります。

「月」を奏でる塵と亜夜の音が耳に目に静かに染み渡ります。

二人を照らす月明かりもまた印象的です。

 


クラシックはよくわかりません。

が、音楽を聴いてみたいと思わせてくれます。

 


ラストに弾かれる曲が良かった。

「踊りたくなるような曲」っていうくだりに掛けたんでしょうかとも思いました。

それにしても感情の伝え方がうまいなと思いました。

ピアノに映り込む親娘のおもかげ、はっと気づく栄田亜夜の表情があまりにも優しくて。

最後に見せる笑顔がすぐに理解するのが難しかったくらいです。

笑顔というのは実に多くの感情を含んでいるものだなと。

ここで書くのはやめとこ。観た人にしかわからない感情がきっとあると思うから。

 

 

 

 

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# photo by snowflakes 自宅ピアノの図(長らく弾いてない。そもそも弾けない)

 


そうそう。

蜜蜂と遠雷」の単行本、何を思ったか売ってしまったんですよね。

相当丁寧に扱ってたので「今、買ってきたよー」って言ってもおかしくない美書籍。

なにの売っちまった。

買った人嬉しかっただろうなー。超、綺麗だし。安価で売ったし。

 


読み返したいぜ。。

書いなおそうかな、単行本。

 


# スピンオフの短編集「祝祭と予感」良かったぜ。